なぜ相続は
「争族」になってしまうのか?
そう思っている方に、少し立ち止まって考えてほしいことがあります。
相続トラブルは、仲の悪い家族だけに起きるわけではありません。むしろ、「まさか自分たちが」と思っていた家族が、気づいたら争族になっていた——というケースを、私は何度も見てきました。
私自身も、「まさか」と思っていた側でした
親族の間で争いなんてない方が良いに決まっています。それは誰もが思うことです。
私が相続の仕事に携わるようになったきっかけは、父が「争族」の当事者になってしまったことでした。あの頃の私も、「まさか、うちが相続で揉めることはない」と思っていた側の人間です。
しかし現実は違いました。そして父のケースだけではありません。
20年以上前に遺産分割協議を済ませたはずの兄弟姉妹が、その分割方法について今もなお言い争っているケース。両親の面倒を一切見なかったにもかかわらず、法定相続分での分割を強く求めてくる相続人たち。条件付きで相続放棄したにもかかわらず、その条件をまったく守らない長女——。
挙げればきりがありません。相続に関わる紛争は、今この瞬間も、どこかの家族の間で起きています。
「まさか自分たちが」と思っていた家族が、気づいたら争族になっていた。それが、相続の現実です。
「争族」という言葉が生まれた理由
「争族」という言葉をご存知ですか?
相続(そうぞく)の「相」を「争」に変えた造語です。遺産をめぐって家族が争う様子を表しています。誰が最初に使い始めたのかはわかりませんが、この言葉が広まったこと自体、それだけ多くの家族が相続をきっかけに争いになっているという現実を反映しています。
なぜ、相続はこれほど争いになりやすいのでしょうか。
私が現場で見てきた経験から言うと、原因は大きく3つあります。
争族になる3つの原因
この3つが重なったとき、どんなに仲のよかった家族でも、争族になる可能性があります。財産の多い少ないは、関係ありません。
とある男性との面談で、こんな話を聞きました。
「相続になったら、兄弟姉妹から細かいことを聞かれて、『きちんと分けろ』と言われるのはわかっているんです。もう、紛争になるのは覚悟してます。なので、その前に、どうしておくべきなのか教えてほしいのです。」
その言葉を話しているときの表情が、覚悟9割、さみしさ1割——そう見えた気がしました。
この方のように、相続のことをきちんと考えている人でも、「争族になることを覚悟している」という現実があります。でも私は思うのです。その覚悟は、本当に必要なのか、と。
「争族」は、事前に防げる
ここで大切なことをお伝えします。
争族は、決して避けられない運命ではありません。事前にきちんと準備しておけば、防ぐことができます。
争族を防ぐために最も重要なのは、「感情への配慮」です。このシリーズの③でも触れましたが、相続は制度の問題である前に、感情の問題です。
法的に正しい分割をしても、感情的に納得できなければ、争いは起きます。逆に、感情を丁寧に扱い、全員が「納得して決めた」という実感を持てれば、どんな複雑な状況でも争族を防ぐことができます。
① 早めに家族で話し合う場を持つ
相続発生後に初めて話し合うのでは遅すぎます。親が元気なうちに、家族全員で財産の状況や意向を共有しておく。それだけで、争族のリスクは大きく下がります。
② 感情を発散できる場をつくる
「法律上はこうだから」という正論だけでは、感情は置き去りになります。それぞれの思いを話せる場、聞いてもらえる場を意図的につくることが大切です。
③ 第三者を交える
家族だけで話し合うと、感情的になりやすく、誰かが強引に進めるか、誰も決められないかのどちらかになりがちです。中立な第三者が入ることで、話し合いが建設的に進みます。
まとめ
争族になる原因は、感情のもつれ・環境の変化・手続きの複雑さという3つが重なることで起きます。これは「仲の悪い家族」だけの問題ではなく、誰にでも起こりうることです。
しかし、争族は防げます。早めに話し合い、感情を丁寧に扱い、必要であれば第三者を交える。この3つを意識するだけで、リスクは大きく下がります。
「まさか自分たちが」と思っているうちに、動き出すことが大切です。
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