保険・不動産・士業だけでは
解決できない理由
正確にお伝えすると、専門家が行う通常の業務範囲だけではカバーしきれない領域こそが、相続対策において最も重要なのです。
今日は、バランスの欠けた相続対策にならないために必要な「チームビルディング」と「家族会議支援」について話します。
相続対策の4つの分野と、チームビルディングの必要性
相続対策には、大きく4つの分野があります。節税対策・納税対策・認知症対策・分割対策です。この4つを意識して一つひとつ進めていければ理想的なのですが、相談者さんだけではそう簡単に整理できません。
相続のことで悩んで足が止まってしまうとき、多くの方の頭の中はこんな状態です。
「それに納税資金も残しておかなきゃ……」
「認知症になったら口座が凍結されるって聞いたけど……」
「最終的にどうやって分ければ、みんな納得してくれるのか……?」
この状況を自分で整理しながら対策を進めていくのは、とても困難です。
私が相談を受けるとき、最初にお伝えするのはいつもこれです。
「まとめるのが得意な人に任せてしまいましょう。」そして、必要な専門家でチームを作ってもらえばいい。
家を建てるとき、施主さんがハウスメーカーに伝えるのは「要望」だけです。設計図を自分で描いたり、各業者と直接打ち合わせをしたりはしません。相続も同じです。相談者が自分で全体設計をするのではなく、全体設計できる人に任せる。その人が必要な専門家チームを組み、4つの分野を横断的に対策していく——これがチームビルディングです。
「調整役」と「実務執行役」——チームの二つの役割
チームには大きく二つの役割があります。この役割分担が明確なチームほど、相続対策がスムーズに進むと、私は現場で感じています。
・対策の素案作成
・家族会議の支援
・各専門家との連絡・調整
・戸籍調査・財産目録の作成
・遺言書・協議書の作成
・不動産評価・登記手続き
この「調整役」は、業種やライセンスで決まるものではありません。税理士が担うこともあれば、保険代理店・不動産業・相続コンサルタントが担うこともあります。
では、どうやって見極めればいいのか。私がいつもお伝えしているのは、一つだけです。
「チームビルディングができるかどうか」——全体の設計図を描き、工程表を作り、最初から最後まで実行支援してくれる調整役がいるチームかどうか。これが相続対策の成否を左右します。
相続対策で専門家でも補えない領域——家族全員の合意形成
どんなに優秀な専門家が揃っていても、補いきれない領域があります。それが「相続人全員の合意形成」です。
私が実際に経験した話をします。
相談者のご家族はお父様・お母さま・長男さん・次男さんの4名。郊外の地主さんで、自宅は広めの敷地にありました。長男さんの家族は、将来の介護を考えて、実家の近くに住んでいて、次男さんは仕事の関係で都内に住んでいました。
私が対応したのは長男さんです。「実家が広すぎて両親が管理できなくなってきた。建物も古いので、何か活用方法はないか」という相談でした。
調査の結果、賃貸ニーズが見込める立地でした。私は建築会社とやり取りして賃貸併用住宅のプランを立て提案しました。長男さんはとても気に入り、お父様にも説明して納得していただきました。金融機関からの融資、建築会社との契約、管理会社との契約——すべてが整い、順調に進んでいました。
ところが突然、長男さんから連絡が入りました。「父親が融資に抵抗を示して、この話をやめると言い出した」というのです。
私は訳がわからず、すぐにお二人に会いに行きました。結局、真意はわかりませんでした。しかし建築主であるお父様が「やらない」と言う以上、プランは進められません。賃貸併用住宅の話はなくなり、融資なしで土地の一部を売却、その資金で実家を建て替えることになりました。
あの時はなぜ急に中断したのかわかりませんでしたが、今では明確に理由がわかります。家族全員の合意形成が取れていなかったからです。次男さんに話が伝わっていなかったのではないかと、今は思っています。
このようなケースは決して珍しくありません。特に不動産の売却では、販売を開始したのに途中で中断するケースもあります。そのほとんどが、相続人の一部だけで話を進めていたことが原因です。
対策の序盤は関係者が少なく、話がトントン拍子に進みます。しかし、どこかで話がこじれ、最後に頓挫する。そして相続対策全体が止まってしまう——これが、合意形成を後回しにしたときに起きることです。
相続対策の正しい順序を整理すると、こうなります。
私自身も以前は、この「理解→納得」のプロセスが不十分なまま進んでしまったことがあります。あの賃貸併用住宅の話がそうでした。
「何かよくわからないけど、それがいいというならそうしよう」と進めた対策と、「きちんと理解して、納得して決めた」対策では、家族の感情の状態がまったく違います。後者でなければ、本当の意味での合意形成にはなりません。
まとめ
相続対策が保険・不動産・士業だけでは解決できない理由は、対策の分野が多岐にわたり、一つの専門業種だけではカバーしきれないからです。
だからこそ、チームビルディングが重要です。全体設計と工程表を描き、各専門家をつなぐ調整役が中心となって進めること。これが相続対策を成功させる鍵です。
そして、どんなに優れたチームであっても、最終ゴールは「家族全員が納得して合意すること」です。調整役が家族会議を支援し、一人ひとりが理解・納得した上で対策を進めていく。このプロセスを丁寧に踏むことで、相続対策は本当の意味で機能します。
「誰に頼むか」より「誰がチームをまとめ、家族の合意形成を支援できるか」——相続対策を依頼するときは、この視点を大切にしてください。
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