「土地が売れない」——
相続登記の放置が、不動産売却を止める日
思わぬところで足止めを食らうことがあります。
原因は、自分の土地ではなく「隣の土地」にあった——。
これは、決して他人事ではありません。
売りたいのに、売れない。その理由が「隣」にあった
これは私が実際に経験した話です。
ある大家さんから「土地を売りたい」というご相談をいただきました。
土地を売るためには、隣の土地との境目をきちんと確認する作業が必要です。ところが、調べてみると隣の土地の名義人がすでに亡くなっていることがわかりました。
「では相続した方に連絡を」と思ったのですが、その相続人もすでに亡くなっていたのです。
つまり、「隣の土地が誰のものか」という話し合いができる人が、誰もいない状態になっていました。
結果として、法務局と何度も調整を重ね、売却が完了するまでに半年から1年近くかかってしまいました。
大家さんは「早く売りたい」という思いだったのですが、長い間待つことになってしまったのです。
原因はひとつです。隣の土地の相続登記が、長年にわたって放置されていたこと。それだけで、無関係のはずのあなたの売却計画が止まってしまうのです。
なぜ、隣の登記が自分に関係するのか
「隣の家の相続なんて、うちには関係ない」と思うかもしれません。でも、土地の売買にはひとつ、避けて通れないことがあります。
それは、隣の土地との境目を、お互いに確認し合うという作業です。
「ここからここまでがあなたの土地で、ここからがうちの土地ですよね」とお互いが確認し、サインをする。それがなければ、買う側も安心して購入できないため、売買が成立しないのです。
隣の土地の名義が古いまま放置されていると、その確認を取る相手がわからない。もしくは、相手を探すだけで何ヶ月もかかってしまう——そういう状況が起きます。
・隣の土地の名義が何十年も変わっていない
・隣に住んでいた方が亡くなったまま、誰も手続きをしていない
・隣の所有者が誰なのか、よくわからない
こうした状況の隣地が一筆でもあると、いざ自分が売ろうとしたときに、思わぬ足止めを食らう可能性があります。
解決できないわけではない。でも、時間がかかる
「では、どうすればいいのか」という話ですが、解決策がないわけではありません。
専門家(土地家屋調査士・司法書士・弁護士)と法務局が連携することで、時間はかかっても境界を確定させる方法はあります。今回の事案でも、最終的には法務局と調整して解決することができました。
ただ、正直に言います。
時間がかかります。費用もかかります。そして、その間ずっと売却が止まります。
半年で済めばまだいい方で、状況によっては1年以上かかることもあります。「早く現金化したい」「次の計画に向けて動き出したい」という思いがあっても、その間は何もできない状態が続きます。
こういう事案に関わるたびに思うのですが、問題の根っこはいつも同じです。「誰かがやるだろう」「急がなくていいだろう」という気持ちで、相続の手続きが後回しにされてきた。
亡くなった方本人には、もちろん悪意はありません。ただ、手続きが後回しにされた結果が、何十年も後になって、見知らぬ隣人の売却計画を止めることになってしまう。
相続登記は、自分のためだけではなく、隣に住む人への配慮でもある——私はそう思っています。
「隣の問題」は、将来「自分の問題」になる
ここで、もう一つ大切なことをお伝えします。
今日の話は「隣の土地の登記が放置されていた」という話でした。でも、裏を返せば——あなたの土地の登記が放置されていれば、将来、あなたが「迷惑をかける側の隣地」になるということです。
お子さんやお孫さんが土地を売ろうとしたとき、あなたの名義のまま放置された土地が「確認できない隣地」として問題になる。そういうケースも、現場では実際に起きています。
・隣との境目は、きちんと確認できているか
・相続が起きたとき、速やかに動ける準備があるか
2024年4月から、相続登記は法律上の義務になりました。相続を知ってから3年以内に登記しなければ、罰則の対象になる可能性があります。「いつかやろう」では、もう済まない時代になっています。
売却予定の土地がある方へ——相続登記と境界確定は今のうちに
もう一つ、大切なことをお伝えします。
「将来、この土地を売るかもしれない」と思っているなら、隣との境目の確認を、今のうちに済ませておくことをお勧めします。
隣の方が元気なうちに確認しておけば、スムーズに手続きが進みます。しかし、いざ売ろうとしたタイミングで隣の方が亡くなっていたり、引っ越してしまっていたりすると、話し合いの相手を探すところから始めなければなりません。
「売ろうと思ってから動く」では、遅いことがある。これが、今回の事案から私が強く感じたことです。
・隣との境目をきちんと確認したことがない
・隣の方が高齢になってきた
・隣の家が空き家になってきた
境目の確認は、売るときだけでなく相続対策としても重要です。土地の状態を整えておくことで、将来お子さんやお孫さんが動きやすくなります。「次の世代への贈り物」として、今のうちに済ませておいてほしいと思っています。
まとめ
隣の土地の相続登記が放置されていると、自分が売ろうとしたときに半年から1年以上、売却が止まることがあります。
そしてこれは「隣の話」ではなく、登記を放置しているあなた自身が、将来誰かに同じ思いをさせてしまう可能性がある話でもあります。
相続登記は、家族のためだけでなく、隣に住む人への配慮として、早めに済ませておくもの——今日の話が、そう考えるきっかけになれば嬉しいです。
【大家さんの相続相談所】では、家族思いで家族のことを大切にしたい大家さんを全力でサポートします。相続について、まずは気軽に話してみませんか。




