ときどき、こんなことが気になることがあります。
その対策は、ご家族の相続全体に配慮されていますか?
対策の「やり方」は正しくても、全体設計なしに進めると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。今日は、実際にあった話をもとに、そのことをお伝えできればと思います。
実際にあった話——節税のつもりが、逆効果に
あるご家族から、こんな話を聞きました。私が相談を受ける前の出来事です。
お父様が「相続時精算課税制度」という制度を使って、田舎にある土地と建物をお子さんへ贈与していました。贈与時の金額は1,700万円位。節税対策として活用された、とのことでした。
しかし時間が経過し、相続が発生してからその土地建物を査定してみると、価値が大きく下落していて、約1,000万円弱になっていたそうです。
話を聞いて、率直に感じました。「それなら、相続時精算課税制度を使わずに、相続が発生してから相続した方がよかったかもしれないですね」と。
この制度には、贈与した時点の価額をもとに相続税を計算するという仕組みがあります。そのため、その後に不動産の価値が下がっても、贈与時の高い評価額で税金がかかってしまうことがあるのです。
また、相続時精算課税制度を使えば贈与税を押さえられるケースはありますが、相続税の節税にはなりにくい設計になっています。(※税務の詳細は税理士にご確認ください)
このご家族が「悪いことをした」わけでは、まったくありません。制度を使うこと自体は間違いではありませんし、当時は有効な判断だったかもしれません。
ただ、「この制度を使えば節税になる」という一点だけを見て進めてしまったことで、不動産の価値が下がるというリスクが見落とされていたかもしれません。
「誰に相談すればよかったのか」という点については、こちらの記事に詳しく書いています。参考にしてみてください。
なぜ「部分対策」だけでは足りないのか
相続対策には、さまざまな手段があります。節税・遺言書・生命保険・家族会議・法人化——それぞれに意味があり、有効な場面があります。
でも、これらを「いいと聞いたから」「専門家に勧められたから」という理由だけで、ひとつひとつ個別に進めていくと、どこかでつじつまが合わなくなることがあるように感じています。
・遺言書を書いたのに、内容を誰も知らなかった
・生命保険に入ったのに、受取人の設定を間違えていた
・贈与したのに、不動産の価値が下がって逆効果になった
どれも「対策をしていなかった」のではなく、「対策をしていたのに、全体とつながっていなかった」から起きたことかもしれません。
相続対策は、個別の手段を積み上げるものではなく、全体を設計してから進めるものではないかと、私は感じています。
家族会議を開いて全体設計をうまくまとめる具体的な方法は、こちらの記事に詳しく書いています。ぜひ参考にしてみてください。
全体設計から始めると、何が変わるか
全体設計とは、難しいことではないと思っています。「家族の状況・財産の状況・それぞれの想い」を整理した上で、どの手段をどの順番で使うかを考えること——それだけです。
全体設計があると、こんなことが変わってくるかもしれません。
制度や手段には、それぞれ向いている家族の状況があります。全体を見渡すことで、「うちには合わないかも」という気づきも生まれます。
「今すぐ動いた方がいいこと」と「時間をかけて考えること」が整理されます。焦らず、一つひとつ落ち着いて進められるようになります。
全体設計を家族で共有することで、「なぜこの対策をするのか」が伝わります。一人で進める相続対策ではなく、家族みんなで進める相続対策になっていきます。
今日ご紹介したケースのように、全体を見渡していれば「この制度を使うことで、将来こういうリスクがあるかもしれない」という視点が生まれやすくなります。
「家族の状況と想いを整理すること」から始めてみる。
こんな対策、心当たりはありませんか?
ここで少し、気になることをお伝えさせてください。
相続対策として、こういった取り組みをされているご家族は多いと思います。
・毎年110万円の暦年贈与を続けている
・子供や孫の名義で口座を作ってお金を貯めている
・タンス預金として現金を手元に置いている
これらはどれも、「悪い対策」ではありません。正しく活用すれば有効な手段です。
ただ、もしかしたら——全体設計と違う方向に進んでしまっているかもしれません。
「うちはこれをやっているから大丈夫」と思っていても、全体の設計図なしに進めていると、どこかでつじつまが合わなくなることがあります。今日ご紹介したケースも、そのひとつでした。
「あれ、うちもこれやっているかも……」と感じた方は、一度全体を見渡してみるよいタイミングかもしれません。難しく考えなくていいです。まず「今どんな状態か」を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
相続対策は、「何かをすること」がゴールではないと思っています。家族全員が納得して、安心して相続を迎えられる状態をつくること——それがゴールではないでしょうか。
そのためには、個別の手段から入るより、まず全体を設計することから始めてみると、景色が変わるかもしれません。
「対策しているから大丈夫」ではなく、「全体がつながっているから大丈夫」——そう感じられる状態を、一緒に目指せたらと思っています。
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