家族会議 × 親への切り出し方 × 相続対策の第一歩
近くの喫茶店なら、意外と話せる。
こんな経験、ありませんか?
今日は、親の相続について話し合う家族会議の、うまくいく場合と失敗する場合の違いについてお話しします。
「親と相続の話をしたいのに、どう始めればいいかわからない」
「でも、いきなり相続の話をしたら、親はどう思うだろう。」
「兄弟とも、なんとなく温度差がある気がする。」
「一度話してみたけど、気まずくなって終わってしまった。」
家族会議という言葉は知っていても、実際にどう始めて、どう進めればいいのか。そこで立ち止まってしまう方は少なくありません。
勇気を出して開いてみたのに、思ったように話が進まなかった——そんな声も、よく耳にします。
うまくいく家族会議と、失敗する家族会議。その違いはどこにあるのでしょうか。私はその答えを、意外な場所で見てきました。仕事の会議です。
良い会議と、駄目な会議——仕事の中で感じたこと
不動産の仕事に携わって23年。私はこれまで、管理会社、収益物件の建築会社、不動産仲介会社、地元の不動産屋と、いくつもの職場で働いてきました。そのぶん、数えきれないほどの会議に出てきました。
その中で、今でもはっきり覚えている対照的な会議が二つあります。
立場も、役職も、持っている知識もバラバラな社内の全員が、ただ集められる。何を話し合うのか、事前には知らされていない。
始まってみると、話しているのは社長だけ。ほかの社員は、黙って聞いているだけでした。
それは、会議という名の「社長の講演会」でした。
終わったあとに残るのは、「結局、何が決まったんだっけ?」というモヤモヤだけです。
グループ企業の代表取締役が集まる会議。事前に状況と資料が共有されていて、参加者全員が同じ前提に立っている。
それぞれが「何のためにここにいるのか」がはっきりしている。だから話が早い。意見も遠慮なく出る。そして、きちんと結論に向かって進んでいきます。
「この会議はいつも充実している。」と、当時驚いたのを覚えています。進行役を務めていた人の仕切りが、とても機能していた記憶です。
差は、集まった人の能力ではありませんでした。
参加者の能力ではなく、準備と場のつくり方——
私はそう思っています。
うまくいく家族会議と失敗する家族会議——違いは4つ
相続の仕事をするようになって、気づいたことがあります。家族会議でも、本質はまったく同じことが起きているのです。
うまくいく家族会議と、失敗する家族会議。比べてみると、違いは大きく4つに分けられます。
◎ うまくいく家族会議
- じっくりと準備をしている
- 議題が整っている
- 現状が共有されている
- 参加者全員が状況を理解している
× 失敗する家族会議
- 前触れなく、急に会議をやろうとする
- 何を話し合うのか知らない
- 事前の情報が何もない
- 参加者が状況を理解できていない
◎ うまくいく家族会議
- 進行役がいる
- 集中できる環境が整っている
× 失敗する家族会議
- 家族が進行役を務める
- 普段の生活の中で会議をする
◎ うまくいく家族会議
- 全員が意見を言える
- ほかの人の話を聞く意識が強い
- 言葉を選んで会話ができる
- 冷静に会話ができる
× 失敗する家族会議
- 主導権を握る人だけが話す
- 自分の主張だけを通そうとする
- 言葉づかいが雑になる
- すぐに感情的になってしまう
◎ うまくいく家族会議
- 継続的に会議を開いている
× 失敗する家族会議
- 一度ですべての結論を出そうとする
こうして並べてみると、うまくいく家族会議の項目は、仕事の「良い会議」とほとんど同じです。議題を事前に共有する。資料をそろえる。進行役を決める。一度で決めずに持ち帰る。
家族会議ではやっていない。
失敗の原因のほとんどは、ここにあると私は感じています。
特に多いのが、①の「前触れなく、急に会議をやろうとする」です。「せっかくみんな集まったし、今のうちに話しておこう」——子ども世代がやりがちな、いちばん多い失敗かもしれません。
親からすれば、心の準備がないまま、突然大事な話を切り出されるわけです。構えてしまうのは、無理もないことだと思います。
なぜ家族だと、当たり前ができなくなるのか
家族会議は、家族のための会議です。だから家族が中心になって進める。それ自体は、とても自然なことです。
しかし、そこに思いがけない落とし穴があります。
家族は、距離が近い。近いからこそ、いつもの役割や関係性が、そのまま会議の場に持ち込まれます。親は親、子は子、長男は長男。昔からの言い方も、昔からの感情も、一緒についてきます。
家族の仲が悪いからではありません。
家族だから、なのです。
たとえば、子どもが進行役を務めたとします。本人は場をまとめようとしているだけでも、親から見れば「子どもが仕切っている」になる。それだけで、親は身構えてしまいます。
ましてや相続の話です。「財産目当てだと思われたらどうしよう」——そんな不安を抱えたまま進行役をするのは、子どもにとっても重すぎる役割ではないでしょうか。
親に相続の話を切り出すときの、この「財産目当てと思われたくない」という気持ちについては、以前に一本の記事にまとめたことがあります。同じ不安を抱えている方には、きっと響くところがあると思うので、よろしければ合わせて読んでみてください。
関連記事「財産目当て」と思われたくないあなたへ家だと話せないことも、喫茶店なら話せる
ここで、冒頭の話に戻ります。
家の中だと話しにくいことでも、近くの喫茶店なら意外と話せる。周りに他人の目があって、いつもの場所でもない。だから声のトーンも、言葉の選び方も、自然と整っていく。
家族会議にも、まさに同じ作用が働きます。
家族だけで話している空間より、第三者がいる空間のほうが、人は冷静に話せるのです。
喫茶店が教えてくれること
いつもと違う場所なら、いつもと違う話ができる。
そばに誰かがいるだけで、言葉は自然と選ばれる。
第三者は「決める人」ではなく「整える人」
誤解のないようにお伝えしておくと、家族会議に入る第三者は、家族の代わりに何かを決める人ではありません。決めるのは、あくまで家族です。
第三者の役割は、家族が自分たちで話し合える場を「整える」こと。私も相続診断士として家族会議に同席するときは、いつもこのことを意識しています。具体的には、この3つです。
何を話すのか、今どんな状況なのかを事前にそろえ、全員が同じ前提に立てるようにします。
声の大きい人だけで進まないよう、一人ひとりに話す番が回るようにします。
その日に話せたこと、残った宿題を整理して、次の会議へ橋渡しします。
これは、良い会議の条件とまったく同じです。家族だけではつくりにくい「良い会議の場」を、外から少し手伝う。それが第三者の仕事だと、私は思っています。
家族だけで話すとなぜもめやすいのか、専門家が入ると何が変わるのか。その「理由」については、以前に詳しく書いた記事があります。今回の話の土台にあたる内容なので、合わせて読んでいただけたらうれしいです。
関連記事相続の家族会議がもめる本当の理由——家族会議支援の薦め一度で決めなくていい——続けていく家族会議
失敗する家族会議のもう一つの特徴は、「一度ですべての結論を出そうとする」ことです。
良い会議も、一回きりですべてを確定しません。議事を決めて定期的に集まり、前回の続きから話し、少しずつ形にしていく。だからこそ、一回一回が実りあるものになるのです。
家族会議も同じです。1回目は「今の状況を、みんなで知る」だけで十分です。
回数を重ねるうちに、話すこと自体に慣れていきます。そして、家族の空気そのものが少しずつ変わっていきます。
最初の家族会議でやる3つのこと——家族会議の進め方
では、最初の1回はどう進めればいいのか。私が家族会議の進め方としておすすめしているのは、この3つだけです。
「来月、実家のことを少し話したい」と、日時と話したいテーマを前もって伝えます。親に心の準備をしてもらうことが、何よりの第一歩です。
財産のこと、親の考え、それぞれの気持ち。まずは知ることに集中し、決めることは次回以降に回します。
話がまとまらなくても大丈夫です。「続きはまた来月」と次の日程を決めておけば、家族会議は続いていくものになります。
どれも、仕事の良い会議なら当たり前にやっていることです。特に①の「事前に伝える」だけで、親の受け止め方は大きく変わる——私はそう感じています。
実際に家族会議を重ねたことで、重荷を降ろし、毎日が明るくなったご家族の話があります。続けることで何が変わるのか、その姿が伝わると思うので、ぜひ読んでみてください。
関連記事家族会議をやったら、毎日が明るくなった!!まとめ——家族会議は、家族だけでやらなくていい
うまくいく家族会議と、失敗する家族会議。その違いは、仕事の良い会議と駄目な会議の違いと、まったく同じでした。
準備をする。場を整える。全員が話せるようにする。一度で決めず、続けていく。
そして、家族だからこそ、それが難しくなる。だから、第三者の手を借りていいのです。
家族会議の成否は、話し合う前の「準備と場づくり」で、ほとんど決まります。
宮川からのひとこと
正直に言うと、あの「講演会」のような会議、私は本当に苦手でした(笑)。発言する機会もなく、ただ時間が過ぎていくのを待つだけ。あの居心地の悪さは、今でも覚えています。
家族会議で同じ思いをしている方も、きっといるのではないでしょうか。話したいことがあるのに、言い出せない。言い出しても、うまく伝わらない。
親に切り出すのは、勇気がいることです。だからこそ、最初から完璧を目指さなくて大丈夫。喫茶店でお茶を飲みながら話すくらいの気持ちで、始めてみてほしいと思っています。
何から始めればいいかわからないときは、一人で抱え込まず、まずは私に話してみてください。
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